法事・法要のお布施とは?相場と基本マナーを紹介
法事や法要では、僧侶に「お布施」を渡します。お布施という言葉を聞いたことがあっても、「お布施はどのくらい包み、渡せばよいのか」「いつ渡せばよいのか」と悩む方は少なくないはずです。ここでは、お布施の概要や相場、お渡しする際のマナーを解説します。
目次
- そもそもお布施とは?
- 「お布施」の由来
- お布施には種類がある
- お布施の相場
- 四十九日
- 一周忌法要
- 納骨法要・納骨式
- 三回忌
- お盆
- お彼岸
- 地方によって変わるお布施の相場
- お布施が高くなるのはどんなとき?
- お寺と深く長い付き合いがあるとき
- 地域と宗派の数に違いがあるとき
- お寺の格が高い
- お布施を渡す際のマナー
- お布施を入れる紙・封筒
- お金を入れるときの向きは?
- お布施を渡すタイミングと渡し方
- お布施の封筒は袱紗に包む
- 法要前と後、いつ渡す?
- お布施と一緒に渡すお金の内訳
- 御膳料
- お車代
- 開眼供養・納骨式のお布施
- 仏教以外の葬儀でお布施は必要?
- 神道におけるお布施
- キリスト教におけるお布施
- 何よりもお礼の気持ちを忘れずに
そもそもお布施とは?
お布施とは、端的にいうとお礼の気持ちを込めて僧侶へお渡しするお金のことです。法要で読経をしてもらったり、戒名を授けてもらったりした際などにお礼として支払います。お布施は僧侶へお礼をお渡ししますが、本質的には「御本尊へのお供え」です。また、お布施はあくまでお礼として渡すもの。宗教行為への対価とは異なり、「戒名料」「読経料」など対価を連想させる呼び方は好まれないため、注意が必要です。
「お布施」の由来
「お布施」という言葉の由来は、インドの逸話にあるといわれています。昔、1人の高僧が貧しい家で説法を行いました。家の人は高僧の説法に強く感銘を受けましたが、お礼として用意できるものは薄汚れた布だけ。しかし高僧はその布と感謝の気持ちを受け取り、その布を使ってつぎはぎだらけの袈裟を作ったそうです。これが「お布施」、ひいては「袈裟」の由来だといわれています。
お布施には種類がある
お布施は「財施(ざいせ)」「法施(ほうせ)」「無畏施(むいせ)」という3つの種類で分けられます。「財施」は僧侶へのお礼として金品を施すこと、「法施」は仏の教えを教え伝えること、「無畏施」は安心を与えることを意味します。現在のお布施は、より正確にいうと「財施」にあたる行為なのです。
お布施の相場
お布施の相場は、法事や法要の内容によって異なります。以下にて、各法要におけるお布施の目安をご紹介します。
四十九日
四十九日法要におけるお布施の相場は3~5万円ほどです。また、納骨や開眼法要なども同日に行う場合、より多くの金額を包む必要があります。会場までの交通費を包む「お車代」、僧侶が会食に参加されなかった場合に包む「御膳料」も忘れずに用意しましょう。
一周忌法要
四十九日法要と同じく、3~5万円が相場です。こちらでも、お車代として5千円~1万円程度のお金を包みましょう。
納骨法要・納骨式
納骨法要や納骨式では、お布施として1~5万円ほどの金額を用意しましょう。四十九日法要や一周忌法要と同日に行う場合は、法要から納骨までの1日分のお布施としてまとめてお渡しするのが一般的です。
三回忌
三回忌では、3~5万円程度のお布施を包む必要があります。一般的に3万円、5万円、7万円と奇数の金額を用意します。寺院で三回忌法要を行う場合、法要前か法要後にお布施をお渡しするのが一般的。寺院以外で法要を行う場合は、法要後にお渡しするとスムーズです。その際、お布施は直接手渡しするのではなく切手盆等に載せて渡すようにしましょう。
お盆
お盆におけるお布施の相場は、新盆か否かで変わります。新盆では3~5万円、それ以外であれば5千円~1万円程度のお布施を包みましょう。
お彼岸
合同法要のお彼岸では5千円~1万円程度、個別法要を実施する場合で3~5万円程度がお布施の相場となります。
地方によって変わるお布施の相場
法事・法要が地域によって異なるように、お布施の相場も地域によって変動するものです。四十九日法要の例をあげると、東北地方では3万円程度の相場であるのに対し、関東では5万円、関西では4万円程度となり、都心部の方が上がる傾向にあります。ただし、現在では混乱を避けるために一律でお布施を設定している寺院も少なくありません。
お布施が高くなるのはどんなとき?
ある程度の目安があるとはいえ、お寺との関係や地域差などによりお布施の金額は前後します。具体的には、お寺との関係や地域と宗派の違いがあると高くなる傾向があることを覚えておきましょう。
お寺と深く長い付き合いがあるとき
「昔から付き合いがあり、現在でも寄進を行っている」という場合、お布施もやや多くなります。逆に「今回の法事・法要限りの付き合い」という場合は、地域の相場通りのお布施を用意するのが一般的です。
地域と宗派の数に違いがあるとき
地域とお寺の宗派によっては、お布施が高くなる傾向にあります。たとえば浄土真宗派の人が多い地域で天台宗・真言宗の寺院を営んでいる場合、必然的に法事や法要の依頼は限られてきます。そのなかで、寺院は少ない案件のお布施でやりくりする必要があります。結果として、お布施の相場がやや高めになるのです。
お寺の格が高い
お寺には「総本山」「大本山」「本山」「末寺」の順番に格があります。これは「寺格」と呼ばれるもので、寺格が高ければ高いほどお布施の金額も高くなるのです。寺格の概要を簡単に説明すると、以下のようになります。
総本山
総本山は、各宗派における「本山」を取り仕切るお寺を指します。
大本山
総本山の下位にある寺格で、「末寺」と呼ばれるお寺を取りまとめる役割を担っています。
本山
大本山の下位にあたる寺格、一宗一派を取り仕切る寺院のことです。
末寺
「末寺」は本山によって統率される寺院のこと。寺格のなかでは最も下位の寺格にあたります。
お布施を渡す際のマナー
ここでは四十九日法要の事例を参考に、お布施を渡す際のマナーをご紹介します。適切な封筒や包み紙、お金の入れ方などの情報をご紹介します。
お布施を入れる紙・封筒
お布施を入れる紙・封筒には、無地の白封筒または奉書紙(ほうしょがみ)を使いましょう。また、白封筒を選ぶ際は「不幸が重なる」と連想される二重封筒を避けるのが一般的です。
水引を用いないことが一般的ですが、白黒の結び切り・淡路結びの水引がついたものが選ばれることもあります。結び切りは一度結ぶとほどけない結び方。転じて「二度と繰り返したくないこと」を意味するものであり、弔事全般や婚礼関係に用います。もう一方の淡路結びには、「お寺と家の縁が固く深くつながるように」という意味が込められています。
表書きは「お布施(御布施)」としましょう。「御回向料」と書くケースもありますが、これは宗派や宗旨によっては書けない場合があるため要注意。「お布施」は宗派・宗旨問わず使える無難な表書きです。また、四十九日法要の場合は喪主・喪家の記載を忘れないようにしましょう。
お金を入れるときの向きは?
封筒を開けたとき、お札に印刷された偉人の顔が見えるようにしてお金を入れるのがマナーです。入れる向きがバラバラだと見栄えが悪いため、向きは統一しましょう。用意するお札は新札・旧札どちらでも構わないとされていますが、くしゃくしゃになっているものや汚れがひどいものは選ばないのがマナー。新札・旧札問わずできるだけ状態の良いものを用意し、受け取ってもらいましょう。
お布施を渡すタイミングと渡し方
お布施を渡す際のマナーと、適切なタイミングを解説します。なお、ここでご紹介するマナーは四十九日法要の例をベースとしています。
お布施の封筒は袱紗に包む
お布施を入れた封筒は、「袱紗(ふくさ)」に包んでおきましょう。色は黒、もしくは紫色のものを選ぶのが無難です。渡す際は袱紗からお布施を取り出し、小さなお盆に乗せてから渡しましょう。お盆は、100円ショップなどで手に入るもので構いません。また、僧侶から「お布施」という文字が見えるように渡すのも忘れずに。法要が始まる前に渡すのであれば「本日はよろしくお願いいたします」とあいさつを。法要後に渡す場合は「本日はありがとうございました」とお礼の一言をかけると良いでしょう。
法要前と後、いつ渡す?
お布施を渡すタイミングは、明確に決まっていません。ただ四十九日法要の場合は「法要が終わった後に渡す」と考える方が多いようです。なお、御膳料やお車代がある場合はお布施と一緒に渡しても問題ありません。ただし御膳料やお車代はお布施とまとめず、別々の封筒に包みましょう。
お布施と一緒に渡すお金の内訳
法事・法要の際は、お布施のほかに御膳料やお車代が必要となるケースも。それぞれの概要と相場を、以下でご紹介します。
御膳料
四十九日法要の後は、「精進落とし」と呼ばれる会食の席が設けられます。精進落としに僧侶が出席されない場合、「御膳料」を包んでお渡ししましょう。御膳料の意図は、食事の代わりとして現金をお渡しすること。相場としては5千円~1万円程度が一般的です。僧侶が精進落としに出席される場合は御膳料を包む必要はありません。
お車代
お車代とは、僧侶が会場まで足を運ぶ際の交通費を指します。お車代の相場は5千円~1万円程度。会場が近場であれば5千円、遠方である場合は1万円を包むのが無難です。タクシーや電車など、実際の交通費を目安に包むと良いでしょう。ただし、菩提寺を四十九日法要の会場とした場合は僧侶の移動が必要ないため、お車代を用意する必要はありません。
開眼供養・納骨式のお布施
四十九日法要と同日に開眼供養・納骨式を行う場合は、3~5万円程度のお布施をさらに包みます。開眼供養とは、新しい仏壇を開いたりお墓を開いたりする際に行う法要のこと。宗派によっては魂入れや入魂式とも称されます。この開眼供養を行うことで仏壇や位牌などに仏様の魂が宿るとされ、宗教的な意味合いが強い儀式です。
開眼供養・納骨式を四十九日法要と同時に行わない場合は、追加のお布施は必要ありません。
仏教以外の葬儀でお布施は必要?
日本の仏教には13もの宗派があるとされ、宗派によってお布施の相場は変わってきます。たとえば禅宗の一派「曹洞宗」ではお布施の総額がやや高めになるのに対し、庶民を中心に信仰されてきた「浄土真宗」ではお布施が比較的安い傾向にあるのです。
くわえて、神道やキリスト教など信仰そのものの宗派が違うケースも珍しくないでしょう。神道・キリスト教での法事におけるお布施について、以下でご紹介します。神道におけるお布施
神道では、お布施の代わりに「御祭祀料」と呼ばれるお金を包む必要があります。これは、祭祀祈祷をしてくれた神主さんに対する謝礼金です。相場は地方や神社の格式によって異なりますが、葬儀の場合は20~35万円程度と捉えておくと良いでしょう。1日葬の場合は、10万円程度が相場です。御祭祀料のお金は、お布施と同じく白い無地の封筒や奉書紙へ包んでおきましょう。表書きは「御祭祀料」または「御礼」と書けばOKです。
キリスト教におけるお布施
キリスト教の葬儀におけるお布施は、教会への献金として扱われます。また牧師さんや神父さん、葬儀のオルガン奏者へお礼の気持ちとして包むケースも少なくありません。金額相場は教会の規模や葬儀の日程によって異なりますが、5~20万円ほどです。また、献金はお礼の気持ちとはいえデリケートな話題。教会が独自の規定を設けていたり、調整の相談に乗ってくれたりすることもあるため、不安な場合は事前に声をかけておくのが良いでしょう。
献金も、お布施や御祭祀料と同じく白い封筒・奉書紙へ包んでお渡ししましょう。表書きの記載は、カトリックとプロテスタントで異なるため注意が必要です。カトリックでは「献金」「ミサ御礼」「御ミサ料」、プロテスタントでは「記念献金」「召天記念献金」と書きましょう。
何よりもお礼の気持ちを忘れずに
以前は分かりづらかったお布施の金額相場も、最近では「〇〇円から」と教えてくれるお寺や葬儀社も増えてきました。お布施の金額について分からないことがあれば、お寺や葬儀社へ正直に相談するのが得策です。このとき「いくらぐらいが良いですか」と聞くのではなく、「他の方はいくらぐらい出されていますか?」と聞くと良いでしょう。また一定の相場があるとはいえ、お布施は喪主や遺族の気持ちによるもの。お礼の気持ちを持って、お布施を用意することが大切です。