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葬儀費用はいくら必要?葬儀で支払う費用の内訳

葬儀にかかる費用は、さまざまな費目に分けられます。「お別れのときはしっかり送り出してあげたいけれど、費用面が心配」と悩む方もいるはずです。ここでは、調査からわかった葬儀費用の平均や具体的な内訳を解説します。あわせて、葬儀費用の負担を軽減したいときに活用できる各種の給付金制度・補助金制度も紹介します。

葬儀費用を心配するイメージ

目次

葬儀の費用はいくら必要?

ここでは鎌倉新書が行った「第4回お葬式に関する全国調査(以下・同調査)」のデータを参考に、お葬式自体の費用をはじめとした葬儀の平均費用を解説します。

お葬式の費用は119万円

同調査では、お葬式自体にかかる費用の平均は119万1,900円という結果が報告されています。これらの費用には火葬場使用料や人件費、式場使用料などの費用が含まれていますが、飲食や返礼品、僧侶にお渡しするお布施の費用は含まれておりません。

価格帯として最も高い数値となったのは「100万円以上120万円未満」で、調査対象者全体の14.0%という結果になっています。次いで「80万円以上100万円未満」が13.6%となっており、80~120万円の間の価格帯が大きなウェイトを占めていることが読み取れます。 なお、この数値はあくまで平均値です。葬儀のグレードや規模によって費用が大きく変動することを、念頭に置くと良いでしょう。

飲食接待費は平均で約31万円

葬儀の飲食接待費にかかる費用は平均で31万3,800円という結果が出ています。飲食接待費には、お通夜の後に用意されるお酒・食事を指す「通夜振る舞い」、葬儀後に振舞われる食事を指す「精進落とし」などが含まれています。

詳細な価格帯としては、「10万円未満」が最多で調査対象者全体の32.3%を占めています。次いで高いのが「10万円以上20万円未満」で25.1%、「20万円以上40万円」で20.1%という結果が出ています。参列者が多ければ多いほど、飲食接待費はより高額になります。

返礼品費用の平均は34万円

返礼品費用には、参列してくださった方へお渡しする会葬御礼や香典返しなどが含まれています。同調査によると、お葬式の返礼品にかかる費用の平均は33万7,600円。飲食接待費と同様、参列者が多いほど返礼品費用は高くなります。調査対象者が返礼品にかかった価格帯別の割合を見ると、最も多いのは「10万円未満」で33.9%、次いで多いのが「10万円以上20万円未満」で22.1%となっています。

また、会葬御礼や香典返しの扱いは地域によって異なるため、地域別の平均にも大きな差異がみられます。たとえば中部地方の返礼費用の平均は38万3,700円となっているのに対し、近畿地方では22万7,000円という結果です。近畿地方では香典を辞退する習慣が根強く残っていることから、返礼品費用の平均も低くなることが推測されます。

寺院費用は平均で24万円

ここでいう寺院費用とは、僧侶へ渡すお布施やお寺(または神社や教会)への御礼費用を指します。詳細な費用の価格帯の割合としては、最も多かったのが「1万円以上10万円未満」が27.6%という結果になっています。次いで、「10万円以上20万円未満」が22.7%、「20万円以上30万円未満」が15.4%と続きます。寺院費用は、数万円から20万円前後を用意するところが多いようです。

ちなみに、お布施の金額はお寺との関係性や地域の習慣によって変わります。これという金額が定められていないことがほとんどであるため、「いくら包めばいいのかわからない」と迷ってしまうこともあるでしょう。そんなときは親族の年長者や葬儀社、寺院に確認することをおすすめします。寺院へ確認する場合はできるだけ直接的な聞き方を避け、「どれくらい用意されることが多いですか」などと尋ねるのが良いでしょう。

出典: 鎌倉新書「第4回お葬式に関する全国調査」

葬儀にかかる費用の内訳は?

葬儀には、大きく、「お葬式の基本料「接待費」「宗教費用」「施設利用料」の4つの費用に分けられます。以下では、それぞれの費用について解説いたします。

お葬式の基本料

お通夜から火葬までがセットになっている費用です。葬儀社によって細かい違いはありますが、お葬式に必要な棺や祭壇などを含めたセットプランを基本料金と設定しているケースが一般的です。葬儀の見積をとる際は、基本のセットプランに含まれている品目・品名をよく確認することが大切です。

接待費

通夜振る舞いをはじめとした飲食費、会葬御礼をはじめとする返礼費用が含まれます。これらの費用は、参列者の数によって大きく変動します。家族や親族のみならず、会社関係者や友人も大勢参列するような葬儀では参列者が増え、必要な接待費も高額になります。逆に家族や身内のみで執り行われる葬儀であれば、接待費の大半が必要なくなる可能性もあるのです。よって葬儀社へ見積を依頼する際は、想定する参列者数別の見積をとっておくことをおすすめします。

宗教費用

宗教費用は、僧侶やお寺へ納めるお布施を指します。なおキリスト教式の場合は献金、神式の場合は御祭祀料がこれにあたります。前述の通り、これらの宗教費用は決まった金額がありません。あくまで「宗教者に対するお礼の気持ち」を示すものとされているためです。いくら包むべきか不安な場合は親族や葬儀社、寺院・教会・神社との相談のうえ宗教費用を用意するのが得策です。

施設利用料

葬儀を行うセレモニーホールや、遺体の安置施設に対して支払う費用です。これらの費用は公営のセレモニーホールを使ったり、自宅で葬儀を執り行なったりすることで抑えられます。

葬儀費用の支払いは誰が負担する?

葬儀費用は、葬儀の喪主または施主となる方が支払うことが一般的です。ここでいう施主とは「お布施を行う主」という意味合いがありますが、実際には葬儀全体の仕切り役である「喪主」と同一視されるケースが多くみられます。近年では子どもが喪主をつとめ、高齢の親が施主をつとめる例もあります。なお、喪主と施主は血縁関係が近い順から決めることが一般的になっています。ただし、これはあくまで一般的な例であり、葬儀を負担する方が誰なのかは、明確に決まっているわけではないので、兄弟姉妹や親族間で分担して支払っても問題ありません。

従来とは異なる葬儀の形式

近年では、従来とは異なる形式で葬儀を行うケースも増えてきています。とくに、「費用負担を抑えつつしっかりとお見送りしたい」という方から注目を集めているのが「家族葬」や「1日葬」です。それぞれの形式が持つ特徴を紹介します。

家族葬

家族葬とは、故人の家族や少数の親族のみで行う葬儀です。家族葬に明確な定義はなく、家族と一部の親族にごく親しい少数の友人を加えるケースも「家族葬」と呼ばれることがあります。基本的な式の流れは一般的な葬儀とあまり変わりませんが、参列者が少人数であるため各種費用や準備にかかる負担を軽減できるというメリットがあります。経済的負担を軽減できるだけでなく、お別れに向けて心の整理をする時間も作れます。また、参列者1人ひとりの要望や想いを反映させやすいことも特徴としてあげられます。生前、故人が「お葬式は身内だけで行いたい」と伝えていた場合にもふさわしい形式だといえます。

家族葬を行う際に注意しておきたいのが、「どこまでの範囲の方に葬儀のご案内を出すべきか」という点です。前述した通り、家族葬には明確な定義がありません。「どこまでお知らせすればいいのか」と迷ってしまう方もいるはずです。葬儀が終わってから、「なぜ葬儀のことを知らせてくれなかったのか」と故人の知人に悲しまれてしまうことも考えられます。案内する範囲を慎重に検討したうえで、家族葬を行いましょう。

1日葬

1日葬とは、お通夜を省略して告別式から火葬までを1日で執り行なう葬儀のことです。葬儀社によって微妙な差異がありますが、プランには納棺から告別式、式中初七日法要、お別れの会から火葬までが含まれていることが一般的です。1日葬儀ではお通夜を省略するため、そこにかかる接待費や会場費、飲食費の負担を軽減できます。一方で告別式やお別れの儀式はしっかり行えるため、故人を偲ぶ時間を確保できるのも1日葬が選ばれているポイントです。「費用や準備にかかる負担を抑えつつ式をしっかり行いたい」という場合をはじめ、「高齢の親族や遠方の親族の負担を減らしたい」という場合にも適しています。

1日葬儀を行う際の注意点は、お寺との話し合いが必要になるという点です。その理由は、お寺によっては、1日葬に反対されることも考えられるためです。付き合いのあるお寺が1日葬に理解があるか、1日葬の供養や納骨を問題なく行ってもらえるかといった点を事前に確認しておくと安心です。また、1日葬はお通夜を省略するため、参列者のなかには都合の合わない方もいるでしょう。「どうしてもお悔みの気持ちを示したい」という方が葬儀後に集まり、結果的に弔問客対応が忙しくなることも考えられます。混乱を避けるためにも、必要に応じて弔問や香典を辞退する旨を事前に周知しておくことが大切です。

葬儀費用の負担を抑えられる制度

葬儀には、さまざまな費用が必要となります。「故人をしっかりお見送りしたい」と思いつつ、同時にお金に関する不安を抱える方も少なくないはずです。そんなときは家族葬や1日葬といった形式の葬儀を選択肢に入れるほか、各種補助制度を使って葬儀費用を軽減するという方法もあります。以下で、葬儀費用を軽減できる補助制度をいくつか紹介します。

葬祭費補助金制度

葬儀終了後、各自治体の窓口にて所定の申請手続きを踏むことで葬祭費の給付金を受け取れる制度です。故人が国民健康保険や国民健康保険組合、後期高齢者医療制度の加入者であった場合は、どなたでも受け取れます。給付金の金額は各市区町村によって異なり、東京23区の場合は50,000~70,000円ほどとなっています。東京を含め、千葉や埼玉、神奈川といった首都圏エリアでは50,000円が相場となっているようです。

葬祭費補助金制度の注意点は、申請期限が定められていることがいえます。葬儀の翌日から2年間という申請期限があり、期限を過ぎると給付対象外となってしまうため注意が必要です。また、お通夜や告別式を省略して直葬とした場合も給付対象外となることがあります。

葬祭扶助制度

葬祭扶助制度とは、故人または喪主をつとめる遺族などが生活保護を受けている場合に利用できる制度です。同制度を利用することで、最低限の葬儀を行うのに必要なお金を自治体から受け取ることができます。申請は故人の住んでいた市区町村役場で行います。

葬祭扶助制度における具体的な支給金額は、自治体や故人の年齢によって異なります。また、「最低限の葬儀を行うこと」を前提とした支給金額であるため、お通夜や告別式などは省略されます。なお同制度を利用する際は、自己資金を加算することはできません。「少しの自己資金を足してセレモニーをしたい」という希望は不可となるため、注意が必要です。

埋葬料

埋葬料とは、故人が協会けんぽをはじめとした社会健康保険に加入していた場合に受け取れる給付金のことです。該当する健康保険組合、もしくは社会保険事務所へ申請することで受け取れます。なお申請者は、故人が生計を維持していた世帯で同居していた家族である必要があります。 支給金額は5万円となっていますが、健康保険組合によっては独自の付加給付を実施しているところもあります。

埋葬料の申請は、死亡した日の翌日からから2年以内と定められています。葬祭費補助金制度と同様に、期限が過ぎると給付対象外になってしまうため要注意です。

埋葬費

埋葬費は、埋葬料と同様故人が社会健康保険や協会けんぽなどへ加入していた場合に支給される給付金です。埋葬料と大きく異なるのが、受給対象者の条件です。埋葬料の場合は、故人の収入にすべてまたは一部依存して世帯の生計を維持していた方が申請・受給の対象者になります。一方、埋葬費の場合は、生計の維持状況に関わらず実質的に埋葬を行った方が申請・受給の対象者となります。

埋葬費の支給額は、埋葬料と同じく5万円と定められています。申請期限は埋葬した翌日から2年以内となっているため、できる限り速やかに手続きを進めることが大切です。

不安なく故人を送り出すために

葬儀では、ゆっくりお別れする時間を作って、故人を送り出したいものです。そのためには、葬儀費用に関する不安をできる限り軽減しておくことが重要です。各種補助制度を活用したり、故人の意思を優先したうえで一般葬とは異なる形式の葬儀にしたりといった工夫をすることが望ましいといえるでしょう。

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