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しっかりお見送りするために知っておきたい
【葬儀の流れ】

葬儀の流れには、お通夜や告別式などさまざまな儀式が含まれています。ここでは故人が逝去してから初七日法要まで、一般的な葬儀の流れを解説します。同時に、お通夜や告別式、精進落としなどの概要も紹介します。

葬儀のイメージ

目次

一般的な葬儀の流れ

逝去から精進落としを含んだ、一般的な葬儀の流れをまとめました。以下で、順を追って解説します。

逝去

自宅や病室で故人が逝去したら、家族・親族へその旨を伝えます。同時に、菩提寺(家のお墓があり法事・法要を依頼するお寺)や葬儀会社へも連絡しましょう。なお病院で亡くなった場合、死亡診断書が発行されます。死亡診断書は、寝台車で遺体を搬送する際に必要となる書類です。また、搬送前に看護師によるエンゼルケアやエンバーミング(身体の清拭や防腐処理、治療痕の手当など)が行われる場合もあります。

遺体の搬送・安置

寝台車を手配し、遺体を式場まで搬送してもらいます。病院などの霊安室では、死亡後数時間での移動を求められるケースも珍しくありません。よって、寝台車の手配や遺体安置場所の確保はできる限り速やかに行うことが大切です。住み慣れた自宅に安置するほか、お通夜や葬儀の斎場にある専用施設に安置する方法があります。

葬儀の打ち合わせ

打ち合わせでは葬儀の日程や形式を決めたり、喪主・施主を決めたりする必要があります。葬儀会社や菩提寺の僧侶を交えて、会場や予算、参列者の数についても話しておくと良いでしょう。また菩提寺の予定や火葬場が、いつでも空いているとは限りません。各種会場の空き状況についても確認をとっておくと確実です。また、この段階で会社や学校、周囲の関係者などへ一報入れておくと円滑に葬儀を準備できます。

葬儀の打ち合わせでは短い時間でさまざまなことを話し合う必要があるため、気疲れしてしまうこともあります。無理をせずに、家族や親族と上手く役割分担をしたうえで打ち合わせを進めましょう。

納棺の儀

納棺の儀は、故人の旅支度を整えるための大切な儀式です。故人の口に水を含ませる「末期の水」にはじまり、遺体をお湯で洗う「湯灌(ゆかん)」、お化粧を施す「死化粧」、衣装を着替える「死装束」の順で行われます。これらのケアがひと通り完了したら、故人が愛用していた品や思い出の品も一緒に棺へ納めます。これを「副葬品」といいますが、副葬品は故人が好んで着ていた服や家族・友人からの手紙、愛読書の本などを納棺するのが一般的。ただし、厚手の生地でできた服やハードカバーの厚い本は燃えにくいためできるだけ薄いものを選びましょう。眼鏡やゴム製品、金属製品などは遺骨に付着してしまう可能性があるため、棺ではなく骨壺へ一緒に納めるのが無難です。

お通夜・通夜ぶるまい

葬儀へ参列される方と通夜式を行います。その後、参列者へお酒やお食事を振舞う「通夜ぶるまい」をするのが一般的です。通夜式の進行は基本的に葬儀社の担当者が中心になって行うため、過剰に心配する必要はありません。ただし、滞りなく通夜式を進行させるためにも時間に余裕をもって行動することが重要です。受付開始から1~2時間前には会場へ着くようにして、席次や進行の確認を行うことをおすすめします。

一般的な通夜式・通夜ぶるまいは、「進行確認」「受付開始」「一同着席」「僧侶の入場・読経」「焼香・僧侶退場」「通夜ぶるまい」の順で進行します。

葬儀・告別式は、通夜式翌日の午前中に行うことが一般的です。故人と最後のお別れをする大切な儀式ですので、通夜式同様時間に余裕をもって行動しましょう。式場に到着したら受付の準備を整えたり、弔電や弔辞の氏名確認を行ったりします。同時に、会葬御礼の品や会葬礼状の最終確認もしましょう。僧侶の入場と読経が完了したら、焼香へ移ります。告別式での焼香は、お通夜と同様に喪主から遺族、一般の参列者という流れで行うのが一般的です。

焼香の後は弔電の読み上げや閉式の辞を経て、お別れとなります。喪主と遺族の手で棺の蓋に釘打をして寝台車へ載せたら、火葬場へ向かいます。

火葬

最後のお別れを済ませて、火葬します。火葬の所要時間は1時間程度で、その間は専用の控室で待機することになります。火葬後は喪主をはじめとする遺族が中心となって骨上げします。骨上げの順番は、喪主にはじまり血縁の深い順に2人1組で行うのが一般的です。足先の骨から頭の骨へ向かって順番に骨壺へ納めていきます。ただし、骨上げの習慣は地域によって異なることもあります。不安な場合は、葬儀会社や菩提寺へ事前に確認しておくと良いでしょう。

初七日法要・精進落とし

従来の初七日法要・精進落としは、故人の没後7日目に行います。しかし、近年では「繰上げ初七日」として、葬儀当日に初七日法要を行うケースが増えてきています。これは、遠方在住の親族や関係者へ配慮した結果です。また首都圏などでは、火葬場の空き状況の関係もあって繰上げ初七日が浸透してきたと考えられます。

地域の風習によって異なりますが、初七日法要の所要時間は30~40分程度。その後は、参列者や僧侶の方と会食する「精進落とし」を実施します。従来の精進落としは、故人が没してから四十九日後の「忌明け」に合わせていただく食事でした。遺族が肉や魚を絶って喪に服していた期間を終え、通常の食事へ戻るという宗教的な意味合いが込められていたためです。現在では、参列者や葬儀でお世話になった方をおもてなしする会食へと変化しています。

精進落としは、懐石料理や仕出し弁当などが一般的です。お寿司やオードブルなども定番になっています。関係者を労う意味もあるため華やかな料理が出されることもありますが、慶事の食材だとされる鯛やイセエビなどは避けるのがマナーです。

葬儀後に準備すること

葬儀が終わっても、準備することや確認することは多く残っています。以下では、挨拶回りや各種引継ぎ作業など葬儀後にやるべきことをリストアップしました。葬儀後になって焦らないよう、やるべきことを事前に把握しておきましょう。

引継ぎやお世話になった方への挨拶

葬儀の世話役などから香典帳や会葬者名簿、香典などを引継ぎます。場合によっては一部経費を立て替えてもらっている可能性もあるため、「立て替えはありませんでしたか?」とお声がけすることも忘れずにします。立て替えがあった場合は、その場で清算しましょう。

並行して請求書や納品書、領収書の整理もします。出納帳と照合し、未払い額と出金額のチェックをしましょう。葬儀費用は相続税の控除対象となるため、出納帳はとくに正確に記載する必要があります。また、香典返しや返礼品を贈る際には会葬者名簿と香典帳の確認が必要となるため、これらの整理も忘れず行います。

挨拶回りは、葬儀の翌日からはじめるのが一般的。世話役をはじめ弔辞・弔電をいただいた方や菩提寺、病院関係者やご近所の方、職場などを対象に回ります。直接挨拶回りへ出向けない方、弔辞や弔電をいただいた方へはお礼状を送りましょう。家族葬や密葬を選択していた場合、遠方の方やお付き合いが遠のいていた方へ逝去したことをお知らせする必要もあります。

後飾りの用意

後飾りとは、納骨するまでの遺骨や遺影写真、位牌などを飾る祭壇のことです。お通夜や葬儀に参列できなかった方は、後飾りを通して故人へ最後のお別れをします。後飾りを飾る期間としては、火葬後から忌明けまでとしていると場合が一般的です。ほとんどの場合は葬儀社の提供する葬儀費用に後飾り代が含まれていますが、プラン内容がオプションとして追加料金がかかるケースもあります。プラン内に後飾りが含まれているか、オプションとしての扱いなのかを確認しておくことが大切です。

各種名義変更手続き

土地や家屋などの不動産や車の名義変更にくわえ、利用していた公共料金や電話などのサービスの解約手続きを行います。また、預貯金や株式など金融資産に関係する名義変更も忘れずに行いましょう。故人が賃貸住宅に住んでいた場合は、家主や賃貸会社へ連絡したのち、解約手続きを進めます。

法的な手続き

遺産相続手続きをはじめとする、法的な手続きを実行します。遺産相続手続きでは、まず遺言があるかを確認しましょう。その後財産をリストアップしたり、相続するか否かを検討したりする必要があります。相続する場合は、財産の各種名義変更を行ったうえで遺産分割協議書・財産目録を作成します。法的な手続きは煩雑で、知識がないと進めるのが難しいといえます。必ず税理士や司法書士などの専門家を交えて手続きを進めましょう。

納骨・四十九日法要

四十九日には後飾り祭壇に安置していた遺骨をお墓に納め、四十九日法要を執り行います。四十九日法要は、故人の没後に行われる追善供養のなかでもとくに大切な法要です。故人が無事成仏できるように、遺族・親族が一堂に会して行われます。また、仏壇や位牌を新しく購入した場合は「開眼供養」も同時に済ませます。

香典返しの手配

香典返しは、いただいた香典に対するお返しの品物です。四十九日法要を終えて、2週間以内にお送りするのがマナーとされています。いただいた香典の金額の半額~3分の1にあたる金額の品物を選んで送りましょう。具体的な品物としては、「不幸を残さない」という意味合いがある各種消耗品が人気。食べたらなくなる食材、使うとなくなる洗剤などが定番です。

家族葬や一日葬の流れは?

家族と親しい身内だけで行う「家族葬」や、1日で告別式と火葬を行う「一日葬」など、従来とは異なる形式の葬儀が増えています。これらの形式では参列者が少なくなったり葬儀の規模が小さくなったりするのが特徴で、お金や準備にかかる負担が少なくなるのがメリットです。とはいえ葬儀の流れ自体は、従来と大きく変わりません。たとえば家族葬の場合、従来の葬儀と異なる点は参列者数や葬儀の規模のみです。

一日葬ではお通夜を省略する

前述した通り、一日葬は1日で告別式から火葬までを完結させる葬儀です。従来の葬儀と大きく異なるのは、お通夜を省略することです。ご遺体を式場へ搬送したら、打ち合わせを経て納棺します。その後、「告別式」「火葬」「骨上げ」「精進落とし」という順番で式が進みます。お通夜を省略するため、その分ゆっくりとお別れの時間を確保でき、準備や費用の負担も軽減できます。

地方によって異なる葬儀の流れ

葬儀の流れは、地域の慣習によって微妙に異なります。ここでは、とくに顕著な違いがみられる関西地方・北海道地方の例を解説します。

関西地方の場合

関東では故人が亡くなった2~3日後に葬儀を行うことが一般的です。対する関西地方では、故人が亡くなった翌日に葬儀を行うケースが多くみられます。これには、関東地方と関西地方の火葬場の空き状況が関係していると考えられます。また、通夜ぶるまいの有無にも違いがあります。関東ではお通夜の後に通夜ぶるまいがありますが、関西では通夜ぶるまいが省略されることがほとんどです。お通夜の後に会食するのは、遺族や親しい方々のみという慣習が残っているためです。

北海道地方の場合

北海道のなかでも、函館市をはじめとする道南エリアには独特の慣習が残っています。同エリアでは、火葬を先に行う「前火葬」が一般的です。火葬後に、従来のお通夜や告別式を執り行います。

お通夜の後に親族一同で記念撮影をしたり、初七日だけでなく四十九日法要も葬儀当日に繰り上げて行ったりすることもほかの地域にはない特徴といえます。北海道は土地が広大であるため、頻繁に親族で集まることが難しいという事情があります。こうした事情があり、葬儀当日に集まった親族の手で各種法要をまとめて行うという形式がとられているのです。

葬儀の流れと必要な準備を把握しておこう

遺された遺族は、短い時間で多くの準備を進めなくてはなりません。故人との別れにゆっくりと向き合い、穏やかな気持ちでお見送りするためにも、葬儀の流れや準備を簡単に把握しておくことが大切です。


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