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葬儀の焼香シーン

【葬儀における焼香のやり方】焼香の作法や宗派別の違いを解説

作法がよくわからないまま、何となく行ってしまいがちな焼香。一般弔問客であれば何とかなってしまうものですが、喪主やご遺族の立場だと、最初に焼香を行うことになります。宗派によっても作法に違いがあるため、当日に焦ることがないように、事前に覚えておきましょう。

今回は、葬儀で行う焼香の手順や宗派ごとの焼香の違いについて解説します。また、仏教以外の宗教で、焼香の代わりに行われている「玉串奉奠」や「献花」といったしきたりについても紹介します。

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目次

焼香とは?

焼香(焚香)とは、葬儀や法要の際にお香を焚いて、仏や故人を拝むという仏教の儀式です。仏壇に線香をあげることも焼香の一種ですが、一般的に「焼香」というと、葬儀の際に抹香(まっこう)を焚く行為で広く知られています。抹香とは粉末状のお香のこと。昔は沈香(じんこう)や白檀(びゃくだん)が使われていましたが、現代では樒(しきみ)の樹皮や葉を原料にして作られています。

焼香は、お香で体の穢れを取り、清らかな心で故人への祈りを捧げるための行為です。また、仏教では、亡くなった方は香りを食物にしており、善い行いをした故人は良い香りを食べるという「香食(こうじき)」という考えもあります。

仏教発祥の地・インドは、気温が50℃近くまで上昇することもあるほど暑い地域で、それゆえに臭いに悩まされやすかったそうです。また、香料の産地として知られるほど、インドはお香の原料に恵まれていました。このような条件が重なり、お香の研究が進んだ国でした。仏教に「お香を焚く」という作法が取り入れられたのも自然な流れだったでしょう。

焼香をする際には、左手に数珠をかけて、右手の親指・人差し指・中指で抹香を軽くつまみ、香炉に落とします。額の高さまで押しいただいて(つまんだ抹香を額の高さまで掲げて)から香炉に落としたり、抹香を何度か捧げたりすることもありますが、作法は宗派によって異なります。

焼香の基本作法とマナー

焼香は、故人との関係が深い方から順番に行います。最初は喪主が焼香を行い、遺族の方、参列者(友人・知人)の順番で焼香を行うのが基本です。西日本では焼香の順番でトラブルにならないよう、あえて最後に関係の深かった方が焼香を上げる、という「止め焼香」を行うこともあります。

喪主・遺族は、まず僧侶へ一礼し、ご多用の中で予定を合わせて出席してくださった弔問客へ一礼してから、焼香を行います。弔問客も僧侶と遺族へ一礼し、遺族も一礼を返します。焼香は、右手で抹香をつまんで香炉に落としたあと、数珠を手に持って合掌するという流れで行います。宗派によって焼香の回数は異なりますが、一般参列者には「焼香は1回でお願いします」と案内されることもあります。

焼香の手順

以下のように、宗派ごとの焼香について覚えておくと、葬儀当日も安心でしょう。ただ、作法を間違えてしまっても大事になることはありませんので、マナーにこだわりすぎるよりも、故人への追悼の意を込めて、丁寧に焼香を行うことのほうが大切です。

<宗派別・焼香の作法>

宗派 焼香の回数・作法 数珠の作法
天台宗 ・焼香の回数に決まりはありません。
・右手の「親指」「人差し指」「中指」の3本の指で抹香をつまみます。
・すべて押しいただいて、香炉に落とします。
・略式数珠を用います。
・数珠を左手にかけて、右手を添えるように合わせ、合掌をします。
真言宗 ・焼香は3回行います。
・右手の「親指」「人差し指」「中指」の3本の指で抹香をつまみます。
・すべて押しいただいて、香炉に落とします。
・本式数珠か略式数珠を用います。
・房が手首の内側に垂れるように、数珠を左手首にかけ、右手を添えるように合わせて合掌します。
浄土宗 ・焼香の回数に定めはなく、1~3回行います。
・右手の「親指」「人差し指」の2本の指で抹香をつまみます。
・すべて押しいただいて、香炉に落とします。
・本式数珠か略式数珠を用います。
・数珠の輪を両手の親指にかけて、合掌をします。
臨済宗 ・焼香は1回行います。
・右手の「親指」「人差し指」の2本の指で抹香をつまみます。
・抹香を押しいただくことについては定めがありません。
・本式数珠か略式数珠を用います。
・数珠を左手にかけて、右手を添えるように合わせ、合掌をします。
曹洞宗 ・焼香は2回行います。
・右手の「親指」「人差し指」「中指」の3本の指で抹香をつまみます。
・1回目は押しいただき、2回目はそのまま香炉へ落とします。
・略式数珠を用います。
・数珠を左手にかけて、右手を添えるように合わせ、合掌をします。
日蓮宗 ・回数に定めはありませんが、導師は3回、一般参列者は1回行うのが一般的です。
・右手の「親指」「人差し指」の2本の指で抹香をつまみます。
・すべて押しいただいて、香炉に落とします。
・本式数珠か略式数珠を用います。
・数珠を左手にかけて、右手を添えるように合わせ、合掌をします。

また、焼香には「立礼焼香」「座礼焼香」「回し焼香」という3つの方法があります。

立礼焼香の作法

椅子の席が用意されている葬儀であれば、主に立礼焼香を行います。立ちあがって祭壇へ向かい、焼香の前後に一礼をしますが、その際の作法が喪主・遺族・弔問客で異なります。

喪主

  1. 席から立ち、僧侶へ一礼します。
  2. 弔問客に向かって一礼します。
  3. 遺族に向かって一礼します。
  4. 仏前で合掌礼拝をします。
  5. 宗派ごとの作法にならい焼香をします。
  6. 焼香が終わったら、再び仏前で合掌礼拝します。
  7. 1~2歩後ろに下がり、弔問客のほうを向いて、一礼します。
  8. 遺族のほうを向いて、一礼します。
  9. 席に戻るか、焼香台の横に移動します。

喪主が焼香を行う際には、僧侶・遺族・弔問客へ一礼します。弔問客が焼香前に喪主・遺族へ向かって一礼するので、お返事の代わりに一礼を返していきます。

遺族

  1. 席から立ち、僧侶へ一礼します。
  2. 弔問客に向かって一礼します。
  3. 遺族に向かって一礼します。
  4. 仏前で合掌礼拝をします。
  5. 宗派ごとの作法にならい焼香をします。
  6. 焼香が終わったら、再び仏前で合掌礼拝します。
  7. 1~2歩後ろに下がり、弔問客のほうを向いて、一礼します。
  8. 遺族のほうを向いて、一礼します。
  9. 席に戻るか、焼香台の横に移動します。

基本的には喪主と同じ流れで焼香を行いますが、遺族ご自身は、ほかの遺族に向かって一礼をする必要はありません。焼香が終わったら喪主の近くに座り、弔問客の一礼に対して、お返事の代わりに一礼を返していきます。

弔問客

  1. 席から立ち、僧侶へ一礼します。
  2. 遺族に向かって一礼します。
  3. 仏前で合掌礼拝をします。
  4. 宗派ごとの作法にならい焼香をします。
  5. 焼香が終わったら、再び仏前で合掌礼拝します。
  6. 前を向いたまま1~2歩後ろに下がり、遺族に一礼します。
  7. 席に戻ります。

弔問客は、弔問客の方々のほうを向いて一礼をする必要はありません。焼香の順番は、葬儀会社のスタッフが案内してくれることもあります。弔問されている人数が多い場合は、宗派にかかわらず「焼香は1回でお願いします」と伝えられることもあります。

座礼焼香の作法

座礼焼香は、その名の通り座った状態で行う焼香のこと。畳間の葬儀場や自宅での葬儀の際に選ばれることが多く、基本的な流れは立礼焼香と同じです。

  1. 腰を落として前に進み、焼香台の手前で座ります。
  2. 遺族に一礼します。
  3. 仏前に向かって一礼します。
  4. 立ち上がらず、焼香台まで寄って仏前へ合掌拝礼します。
  5. 宗派ごとの作法にならい焼香をします。
  6. 焼香を終えたら、再び仏前で合掌礼拝します。
  7. 仏壇から一歩下がり、遺族に一礼し、立ち上がって戻ります。

回し焼香の作法

立礼焼香や座礼焼香を行うことが難しいような限られたスペースで葬儀を執り行う場合に、回し焼香が選ばれます。香炉が弔問客から回ってくること以外は、基本的な焼香の作法と変わりません。

  1. 香炉が回ってきたら、軽く礼をして受け取ります。
  2. 香炉を自分の前に置き、祭壇に向かって合掌します。
  3. 宗派の作法に従って焼香します。
  4. 祭壇に向かって合掌します。
  5. 隣にいる人か、自分が端に座っていたら後ろの方へ香炉を回します。

回し焼香の順番が最後だった場合は、香炉を喪主にお渡しします。立ち上がってお返しすることが難しければ、前に座っている弔問客の方にご協力いただき、喪主へとお返ししてください。香炉を受け取った喪主は、僧侶のもとへ香炉をお持ちします。

玉串奉奠・献花の作法

焼香のない葬儀に参列する場合は、焼香の代わりとなる儀式があります。神道では「玉串奉奠」を、キリスト教では「献花」を行うことが一般的です。

【神式】玉串奉奠の作法

神道では、お香ではなく「玉串」を捧げます。玉串とは、木の枝に麻布や紙(紙垂)を結び付けた供物です。祈りを込めて玉串を捧げることで、神と人との霊性の仲立ちという役割を果たすと考えられています。神式の場合は、お辞儀の回数やしのび手(音を立てない拍手)を行うという点が、仏式とは異なります。「二礼・二拍手・一礼」と覚えるとよいでしょう。玉串奉奠の作法の手順は以下の通りです。

  1. 喪主と遺族に一礼します。
  2. 神職に軽く一礼し、玉串を受け取ります。
  3. 右手は「枝を上から」持ち、左手は「葉先を下から支えるように」持ちます。
  4. 肘を張り、玉串を胸の高さに持ち上げて数歩進み、遺族に一礼します。
  5. 神前に進み、一礼します。
  6. 玉串案(玉串を捧げる台)の一歩前まで進み、一礼します。
  7. 玉串の根元が手前になるように、時計回りに90度回し、軽く目を閉じて祈念を行います。
  8. 時計回りに180度回して根元を祭壇に向け、玉串案に捧げます。
  9. 前を向いたまま1歩後ろに下がります。
  10. 二回深く礼をし、しのび手を二回、最期に深く一礼します(二礼二拍手一礼)。
  11. 神職と遺族に会釈をして、席に戻ります。

【キリスト教式】献花の作法

キリスト教では、焼香の代わりに花を添える「献花」を行うのが一般的です。白いカーネーションや菊などの花を、1人1本ずつ捧げます。キリスト教式の献花の作法は以下の手順で行います。

  1. 花が右手側に来るように、両手で花を受け取ります。
  2. 献花台まで進み、手前で一礼します。
  3. 茎が祭壇に向くように、時計回りに180度回転させます。
  4. 花を献花台に置きます。
  5. 深く一礼をするか、黙祷を捧げます。信者の場合は十字を切ります。
  6. 顔を上げて、前を向いたまま数歩下がります。
  7. 遺影に向かって一礼して、席に戻ります。
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自分の宗派の作法で焼香をしても問題ない?

焼香には宗派によってさまざまな作法があります。故人やご遺族の宗派と自分の宗派が異なっている場合、自分の宗派に合わせたほうが良いのか、それとも故人に合わせるべきなのか、わからないという方も多いかもしれません。

基本的に、自分の宗派の作法に則って焼香をしても問題ありません。特別信仰する宗派がないなら、喪主やご遺族の焼香を見てそれにならっても良いでしょう。

故人の自宅で焼香する場合

家族葬を執り行った場合や、ご都合が合わず葬儀に参列いただけなかった方が、後日、自宅へ弔問されることがあります。自宅で焼香をする場合は、一般的には抹香ではなく、線香を使います。

葬儀後に自宅へ訪ねてこられる弔問客の対応

ご自宅へ弔問される方の対応の際には、喪服を着用する必要はありません。普段着で問題ありませんが、できればラフすぎる格好や華やかな格好は避け、肌の露出が少なく、落ち着いた色合いの服を選びましょう。

葬儀後の弔問でご遠慮されて、玄関先で香典だけお渡ししてお帰りになろうとする方もいます。その際には、「お線香だけでも上げていただけませんか」と焼香を促すとよいでしょう。了承いただければ、仏壇や祭壇を置いている部屋へお連れします。焼香いただける場合は、簡単なお菓子とお茶をご用意しておもてなしをします。

葬儀後に故人の自宅へ訪ねる際のマナー

家族葬の場合は一般の弔問客の参列を遠慮することもあります。葬儀が終わったあとに、訃報を耳にする方もいらっしゃるでしょう。2020年以降は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、後日の弔問を差し控える方も多くいらっしゃいますが、感染症が落ち着いた暁には、故人のご自宅へ弔問したいとお考えの方も多いかもしれません。

焼香をしない宗教を信仰している場合は?

自分が信仰している宗教・宗派では焼香を行わないという場合は、以下のような対応が考えられます。

  • 故人の宗派を優先して焼香を行う
  • 弔問するが焼香は行わない
  • 葬儀を欠席して御花代をお渡しする

イスラム教の偶像崇拝は明確に禁じられていますが、キリスト教ではどこまでを偶像崇拝とするか、宗派や信者によって異なります。ローマ人への手紙12章15節には「喜ぶものと一緒に喜んで、泣くものと一緒に泣きなさい」というすすめもありますから、葬儀への参列を選ぶのであれば、故人の宗派に合わせて、形式的にでも焼香を行うという選択肢もあるでしょう。

キリスト教の宗派によっては、焼香を偶像崇拝だとみなしており、するべきではないとされています。ただし、弔問客が焼香を断ると、ほかの弔問客から良くない印象を受け、そのクレームが遺族へ向かう可能性も十分に考えられます。ご自身の思想と信仰によって、どうしても焼香をしたくない、できないというご事情があれば、ご遺族の負担を考慮して葬儀を欠席し、代わりに御霊前(お金)をお渡しして弔意を示されるという方法を取るほうが良いかもしれません。

故人の幸せを祈るための基本を押さえておきましょう

焼香は、あの世での幸せを祈るためにおこなう行為ですので、形式にこだわりすぎるよりも、故人を悼む気持ちを込めることの方が大切です。 ただ、喪主やご遺族の方は、最初に焼香をすることになるので、事前に焼香の作法について押さえておくと安心でしょう。当日になって焼香の手順を考えることで頭がいっぱいになることがないよう、最低限のことは覚えておきましょう。そうすれば、焼香の時間には心穏やかに故人を哀悼することができます。

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